さて、もうすぐ通算では何度目になるのかは覚えてないけど、モンゴルへ出かけます。1994年から始めた試走の旅は、実に8年目。ゴビ砂漠や草原で、またはとんでもない場所で結んだビバークの夜は、おそらく本番もカウントすれば300夜は下らないのではないか、そんな気がします。どうしてそこまでこの地に通うようになったか。例えば中国西域タリム盆地やタクラマカン砂漠、シルクロードの要衝として栄えた街。敦煌、楼蘭、カシュガル、ハミ、またはさらに西方、ブハラ、サマルカンドと、これらの地名をひとたび口にするか、耳にでもしたとたんに、デジャヴにも似た、激しい郷愁の念にかられます。
ところが、かつて旅したこれらの街は、いい意味では発展し、異文化と異民族が上手く融合し、中央アジアのエキゾチズムを、色濃く撒き散らしています。しかし、もう一方の目からすると、例えば中国に支配されたそれらの街は、どこのもかしこにも、深紅の幟と横断幕に金紙で貼られた漢字。「歓迎」というようなことが書かれているんだろうが、もう単一国家にしたい中国の圧政ぶりと、内陸部の少数民族の疲弊した笑顔、漢文化と、爆発した人口を養いきれずに、砂漠もかくやと、荒廃していく大地。なんか贔屓目すぎるぞ、とお叱りを覚悟するんであれば、モンゴルの大地のなんと清廉なことか、空気が際立って美しい。人の暮らしも美しく豊かだ。確かに、多くの遺跡の残るシルクロードの町々には、興味は尽きない。
しかしひとたび荒野を走るとなると、この地に勝る地が、この地上にあるとは思えない。「だからだ。」こんなに長く続けられるのも。
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