REPORT of Raid Trek Taklamakan
17 Nov. 北京時間 PM19:00
「トルファンの1日」
ここトルファンは唐の時代には「火州」と呼ばれた盆地で、まさに世界的にも熱い土地だ。死海に続く世界で2番目の低地の湖もある。そこの海抜はマイナス150m。
その盆地では、まさに鍋の底のような炎熱の夏をしのぐため天山の地下水を網の目のようにめぐらせたカレーズという冷房給水システムが紀元前より営々と続いている。カレーズを掘るのは大変な労働で、それを維持管理するのも同じだ。その清冽な水で育てられるブドウたちはこの土地にいくばくかの恵みをもたらせた。日干し煉瓦を網目のように積んだ干しブドウ場が目につく。この地域の風物でもある。
そんな家並を眺めながら、高昌故城に出かけた。ここは玄奘三蔵も訪れ2か月も滞在した高昌国のことだ。城というのは日本と少し概念を異にして、城塞都市のことをいう。周囲を壁で囲み、ほぼすべての都市機能が城内にあるのだ。最盛期にこの城内には3万6千の民が暮らしその1割は僧侶だったというから、まさに仏教王国だ。天竺に向かう三蔵法師はこの城で過ごし、帰路で立ち寄った時にはすでにこの国は滅んでいたという。
日中は50度にもなる夏の炎暑も、日干し煉瓦の断熱性と極度の乾燥に加えカレーズの冷水で、案外この地でも悪くないんじゃなかったのか?なんて尾上さんと話しながらロバ車に揺られていた。
そして昨日ウルムチの博物館で見た木乃伊の保存されていたアスタナ古墳群を覗き、トルファンの市民の台所「バザール」を彷徨って異邦人の気分を味わう。
とにかくありとあらゆる品物がうず高く積み上げられている。色とりどりの果物、野菜、ドライフルーツの種類もただ事ではない。もちろん衣料品もあれば、本物か偽物かはともかくi-phoneだって雑踏に晒されている。
しかし今回の買い物の目玉は乾燥イチジク。いくつも並ぶ露店で値踏みをしながら(というか、つまみ食いをしながら)尾上さんは大粒の高級品を3㎏も買ったので、ボクは小粒のものを1㎏買った。さて、帰り着くまでもって土産になるのだろうか。さっそく今夜はこれを持ち出して、トルファンの名産ワインを愉しもうかということになった。
こうして異民族らが暮らし様々な文化や熱情が交錯し、人びとが生き生きと暮らす姿を見るのこそがシルクロードの旅だ。
ぼくの旅のテーマソング異邦人の歌詞「市場へ行く人の波に身体を預け、石畳の街角をふらふらと彷徨う、祈りの声、ひづめの音・・・」を遠くで聞きながら本当に時間旅行が始まった気がした。
明日はいよいよスタートだ。わずかに高速道でコルラ迄行きタリム川をヘディンのようにいかだで渡る夢を見ながら砂漠の入り口の小さな町「論台」まで走る。ぼくはこの旅にヘディンの「彷徨える湖」を携えてきた。帰ったらこの翻訳本を書きたいなあ、ていうかこれをベースにもっと生き生きとしたシルクロードの人びとのことを書こう、なんて気分だ。気温は大丈夫そうだしマシンもみな順調そうだ。ウラルのみ少しオーバークールだとかで熱いエアをクリーナーボックスまで導風する?スペシャルな改造をしたようだ。
さあ元気に出発できそうだということを報告しておきます。
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